『アブサロム、アブサロム!』はトマス・サトペンの興隆と衰退を詳述している。サトペンはバージニア州西部で貧窮の中に生まれ、これを補完するために裕福で強力な家族の家長となるためにミシシッピ州にやってきた男である。ストーリーの後半はクウェンティン・コンプソン3世とそのハーバード大学のルームメイト、シュリーブによって過去を語る形で、時には前の記述とは異なる詳細さで叙述される。ミス・ローザ・コールドフィールドやクウェンティンの父と祖父の語りも挿入されて、それがクウェンティンとシュリーブによって再度解釈され、ストーリー全体の出来事が年代を行ったり来たりしながら次々と明らかにされる。その結果、タマネギの皮を剥くように、サトペンの真の物語が明らかになってくる。まずローザが、長く脱線しがちな話を偏見のある記憶と共に、クウェンティンに語り始める(第1章)。クウェンティンの祖父はサトペンの親友だった。クウェンティンの父も祖父から聞いた話としてその詳細を埋めていく(第2章 - 第4章)。最後にクウェンティンがルームメイトのシュリーブにその話を語り、さらに互いの言葉で語り直すことで、層を重ねるように話の肉付けを行い、さらなる詳細が明らかになっていく(第6章 - 第9章)。最終的にサトペンの物語の何が真実であるかよりも、人物の態度や偏見についてより確かな感じを抱かせることになる。
フォークナーの文体は、ピリオドもなしに一つの文が延々と続き、時にはハイフンで挿入される文が何十語も間に入るなど、人の語りと思考の揺れを表現しようとしている。1983年の『ギネス・ブック』では「文学における最長の文」として『アブサロム、アブサロム!』の1,287語の一文を挙げていた。