わたしは どれほどまでに
わたしの頭上を飛ぶツルの翼をかりて
あのはかりしれぬ海のかなたの岸
へゆくことを願ったろう
無限の泡立つさかづきから
あふれる人生のよろこびを
得ることを 熱望したろう!
ただ一瞬でも
わが胸のかぎられた力のなかに
あらゆるものを
自己によってつくりだす
まことの幸福の一しずくでも
あじわおうと願ったろう…
春の風よ!
なぜおまえは私を
よびさますのだ
おまえはこびながらいう
空の露にうるおすと!
けれどもわたしの枯れ
しぼむときはもう近い
わたしの木の葉を打ち落とす
風もまじかに吹くだろう
美しいわたしの姿を
見おぼえた
旅人はあすやってきて
野のあちこちを見まわして
わたしの姿をさがすだろう
けれども……ああ
わたしはもう旅人の目には
はいるまい……
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