2017年4月28日金曜日

マハバーラタ

マハーバーラタ』(サンスクリット語महाभारतम्Mahābhārata)は、古代インドの宗教的、哲学的、神話的叙事詩ヒンドゥー教の聖典のうちでも重視されるものの1つで、グプタ朝の頃に成立したと見なされている[注釈 1]。「マハーバーラタ」は、「バラタ族の物語」という意味であるが、もとは単に「バーラタ」であった。「マハー(偉大な)」がついたのは、神が、4つのヴェーダとバーラタを秤にかけたところ、秤はバーラタの方に傾いたためである[2]

作者[編集]

作中人物の1人でもあるヴィヤーサの作と見なされている[3]が、実際の作者は不明である。

特徴[編集]

『マハーバーラタ』は世界3大叙事詩の1つとされる(他の2つは、イーリアスオデュッセイア)。『ラーマーヤナ』と並び、インド2大叙事詩の1つでもある。 原本はサンスクリットで書かれ、全18巻、100,000詩節[注釈 2]、200,000行を超えるとされる。これは聖書の4倍の長さに相当する[注釈 3]
物語は世界の始まりから始まる。その後、物語はパーンダヴァ族とカウラヴァ[注釈 4][注釈 5](この二つを合わせてバラタ族(バーラタ))の争いを軸に進められ、物語の登場人物が誰かに教訓を施したり、諭したりするときに違う物語や教典などが語られるという構成で、千夜一夜物語と似た構成になっているが、大きな相違点としてパーンダヴァ王家とカウラヴァ王家の争いの話自体が語られる物語であることがあげられる。 数々の宗教書も『マハーバーラタ』の物語の登場人物をして語らせることも多く、『バガヴァッド・ギーター』は著名な部分であり、宗教上、特に重視されている。

内容[編集]

パンチャーラ国にはドルパダ王子と仲の良いドローナという少年がおり、ヴェーダをともに学んでいた。やがてドルパダは国王になると、ドローナに「幼い頃は我らの間に友情があったが、国王とそうでない者との間に友情は成り立たない」と諭した。ドローナはパンチャーラ国を後にするとクル族パーンダヴァ国に入り、やがて首都のハスティナープラ英語版で腰を落ち着けた。ある日、5人の王子達が困っているところに出くわし助けたところ、請われてある条件と引換に教師になることに同意した。弟子には、5人の王子達(ユディシュティラビーマアルジュナナクラサハデーヴァ)の他にカルナが居た。ドローナは彼らに戦い方を教えると、かねてからの約束通り、ドルパダ王を捕らえるように願い出た。弟子達はパンチャーラ国に攻め入り、ドルパダ王を捕まえた。ドローナが「国王とそうでない者との間に友情は成り立たないのだから、君の国を奪ったのだよ」と言い放ったが、ドルパダ王の懇願を受け入れ、ガンジス川の北をドルパダ王に返還し、南にドローナの国を作ってパンチャーラ国を分割した。ドルパダ王はいつかこの屈辱を晴らすためにヤグナ英語版を行うと、双子の兄妹(ドゥリシュタデュムナドラウパディー)が生まれた。
ドラウパディーが絶世の美女に成長すると、ドルパダ王は花婿選びを開催した。カルナは優れた弓の名手ではあったがクシャトリヤ以上の階級という条件に合わなかったためアルジュナが勝利すると、パーンダヴァの5王子はドラウパディーを連れて家に帰った。アルジュナの母クンティーは忙しくしていたため、アルジュナがドラウパディーの花婿選びで勝ったという5王子の報告を、托鉢して施物を集めてきたものと勘違いし、兄弟で等しく分かち合うよう言った。こうしてドラウパディーは5王子が共有する妻になった。また、アルジュナは転生したインドラである。
ユディシュティラが大きくなると、父王パーンドゥの跡を継いでいた叔父の盲目王ドゥリタラーシュトラ英語版クル国の半分をユディシュティラに与えた。ユディシュティラはカーンダヴァ森英語版インドラプラスタ英語版の王宮に住むようになった。盲目王の子ドゥルヨーダナは5王子の幻想宮殿を訪ねたとき、水の中に落ちてしまい、ドラウパディーの女中達がそれを喜んで眺めた。元々次の国王は自分だと思っていたドゥルヨーダナは、この扱いに激怒して陰謀を巡らす。ドゥルヨーダナこそ悪魔カリ英語版の転身である。ドゥルヨーダナの怒りを知ったビーシュマは、首都ハスティナープラ英語版を分割してユディシュティラに与え、平和を維持することを提案した。カウラヴァシャクニ英語版が謀ったサイコロ賭博事件英語版が起こり、ユディシュティラは全てを巻き上げられ、王国も失ってしまう。ユディシュティラは、妻ドラウパディーすら賭けで失い、彼女は奴隷にされた。かつて身分の違いを理由に袖にされたカルナは、落ちぶれた姿を目にして奴隷女と罵った。
サイコロ賭博事件の結果、5王子は13年間に渡る森の中での逃亡生活を強いられた。
その後、パーンダヴァ王家は5王子達カウラヴァ王家からの王国奪還を要求し対立が深まった。アルジュナが師ドローナに弓引く戦争をためらっていると、いとこのクリシュナが自分の正体がヴィシュヌであることを証し、「道徳的義務を遂行する自分のダルマを果たすべきで、友人や知人の死で苦しんではならない。彼らは肉体の死によってその病んだ魂を純粋平和な世界へ開放することが出来るのだから」と説いた(『バガヴァッド・ギーター』)。
クルクシェートラの戦い英語版でカウラヴァ王家は全滅する。カルナはアルジュナによって殺され、昇天して太陽神スーリヤと一体化した。ドゥルヨーダナはビーマに殺された。ドローナは、ユディシュティラに捕まえられたところをドゥリシュタデュムナに殺され、悲報を聞いたアルジュナは師の死を悼んだ。

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