2014年8月31日日曜日

ネーションと美学 柄谷定本 第四巻 その1

世界史の構造より抜き書き
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         世界    へゲモニ 政策    資本家   世界商品  国家形態
         資本主義
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1750-1810  重商主義 覇者なし 帝国主義的 商人資本 繊維工業  絶対主義王権
1810-1870  自由主義 イギリス 自由主義的 産業資本 軽工業    国民国家
1870-1930  帝国主義 覇者なし 帝国主義的 金融資本 重工業    帝国主義国家群
1930-1990  後期資本 アメリカ  自由主義的 国家独占 耐久消費財  福祉国家
          主義                  資本
1990-     新自由  覇者なし 帝国主義的 多国籍   情報     地域主義
         主義                    資本          
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注:イスラム帝国のきざしについては柄谷は語っていない BRICSの台頭による世界的食糧・環境危機については、述べられている Youth Bulge in Isramから考えると重要と思われるが。。。。
「序説 ネーションと美学」
  第一 資本・ネーション・ステート
交換には互酬性(共同体)、収奪と再分配(封建国家)、商品交換(都市)、X(X)の4種類がある。すべて等価交換が前提されている。ネーションは愛国的死を道義的に崇高なものと考える第一形式の交換組織である。ステートも納税と再分配が国民の総意で等価交換的に行われると前提される。資本性経済は、消費を断念して資本を蓄積し、信用をもとにリスクを回避する、ほとんど宗教的世界である。十六世紀に世界帝国群が世界経済に移行した。この時期に発生した絶対主義国家こそネーション・ステートの起源であるが、ブルジョア革命により国民主権が確立されたのちに忘れさられた。そして資本主義と3者間に環が形成されたのが19世紀末の先進諸国であり、帝国主義がはじまった。それに対抗したのはレーニン主義とファシズムであった。
 第二 ネーションと美学
   ネーションが確立する時期、西洋哲学史では、感性と悟性を媒介する地位に想像力が置かれるようになった(文献不明)。アダムスミス(18世紀人)は共感を元にした経済倫理学をといたが、現実は正反対の様相になった。それに対抗してイギリスのロマン派はアナキズム的社会主義を唱えた。フランス革命は博愛を唱えたが、これまた現実はそうならず、国家社会主義の元祖が生まれた(ボナパルティズム)。18世紀、ドイツにおいてバウムガルテンにより感性を研究する学問(美学)が開始された。彼は、感性が理性的能力を持つとしたが、カントは感性・感情と理性・悟性を厳しく区別し、それらを媒介する判断力・想像力による直感に超越的何かを予想したが断定はしなかった。そのため、両者は統合しうるとする考えが生まれた、それは想像力の実体化であり、こういう思考を、柄谷は美学的とよぶ。ドイツロマン派哲学は感性・感情と理性・悟性はもともと統合されていると唱えた(フランスのナポレオン一世の占領が影響したドイツ・ナショナリズムの形成)、彼らは言語が内的国境をつくり、実体的には各自のネーションを形成するとした。グリム兄弟のフォークロアはその影響下にある。
 第三 二つの帝国
 1.帝国と帝国主義
 ネーション=ステートは、先行する「地」としての帝国の解体と分節化によって生じた。帝国主義は、帝国とは違い、 ネーション=ステートの延長である。帝国主義的征服は、常に圧制に陥る(アーレント「全体主義の起源」)帝国の原理は、帝国内で遍く通用する国際法と合理的神学をもつ世界宗教、そして世界言語である。書き言葉の翻訳からはじまった方言言語が音声言語として感情などを表現するとした時点でナショナル言語は完成する。聖書のドイツ語翻訳の意義、鎌倉仏教における和文の御誓文などの重要性はそこにある。その後、ロマン派(ヘルダードイツ語の起源ー)のように感性と語性の総合から始める美学的哲学がはじまる。
2.二つの「帝国」
グロバリズムへの対抗として諸国家連合や宗教原理主義があらわれ、かっての『帝国』が参照される。ネーションや宗教は、資本と国家に対する批判と抗議であり、アソシエーションをはらんでいる。