2015年6月4日木曜日

アブサロム、アブサロム

クエンティン・コンプトン三世(その祖父はサトペンの親友だった)にローザ・コールフィールドは話し出す。。。。正体不明のサトペンという男が黒人奴隷団をひきつれて南の湿地からやってきた。インディアンの土地をサギ同然に取得し豪邸を建てる。地方の堅実な家庭の長女エレンと結婚する(コールフィールド家)、その際、エレンの叔母が苦心したが、惨憺たる結婚式となった。その叔母は駆け落ちしていなくなる。エレンの長男ヘンリーは南部からボンという学友をつれてくる。ヘンリーの妹のジョーディスはボンと恋仲になるも、なぜか破局し、長男ヘンリーは父サトペンと義絶する。エレンは死亡する。南北戦争が始まると、コールフィールドは反戦を表明し、部屋にひきこもり死亡する。ボンは実は、サトペンの子供で、しかも他の女性と結婚していた。ヘンリーとボンは南北戦争に参加するが敗戦後にヘンリーはボンを射殺し出奔する。サトペン家には、ジョーディスの異母妹であるクライエティ(黒人奴隷女に産ませた)がおり、エレンの妹(ローザ)も合流して、サトペンの帰りを待つ。サトペンは帰郷してローザと結婚しようとするが、ローザは侮辱されたとして拒否し実家にとどまる。サトペンは使用人ウォッシュの孫娘に子供をはらませるが女子だったので、これを侮辱しウォッシュに大鎌で殺される。

『アブサロム、アブサロム!』はトマス・サトペンの興隆と衰退を詳述している。サトペンはバージニア州西部で貧窮の中に生まれ、これを補完するために裕福で強力な家族の家長となるためにミシシッピ州にやってきた男である。ストーリーの後半はクウェンティン・コンプソン3世とそのハーバード大学のルームメイト、シュリーブによって過去を語る形で、時には前の記述とは異なる詳細さで叙述される。ミス・ローザ・コールドフィールドやクウェンティンの父と祖父の語りも挿入されて、それがクウェンティンとシュリーブによって再度解釈され、ストーリー全体の出来事が年代を行ったり来たりしながら次々と明らかにされる。その結果、タマネギの皮を剥くように、サトペンの真の物語が明らかになってくる。まずローザが、長く脱線しがちな話を偏見のある記憶と共に、クウェンティンに語り始める(第1章)。クウェンティンの祖父はサトペンの親友だった。クウェンティンの父も祖父から聞いた話としてその詳細を埋めていく(第2章 - 第4章)。最後にクウェンティンがルームメイトのシュリーブにその話を語り、さらに互いの言葉で語り直すことで、層を重ねるように話の肉付けを行い、さらなる詳細が明らかになっていく(第6章 - 第9章)。最終的にサトペンの物語の何が真実であるかよりも、人物の態度や偏見についてより確かな感じを抱かせることになる。
フォークナーの文体は、ピリオドもなしに一つの文が延々と続き、時にはハイフンで挿入される文が何十語も間に入るなど、人の語りと思考の揺れを表現しようとしている。1983年の『ギネス・ブック』では「文学における最長の文」として『アブサロム、アブサロム!』の1,287語の一文を挙げていた。